不妊治療のゴールは妊娠することではありません

2019.02.21
不妊治療のゴールは妊娠することではありません

医療の原点は「命を救う」ことにあり、通常では治療前に「どんなリスクがあるのか」、副作用も含めて主治医から詳細な説明が与えられます。一方で、不妊治療は「命をつくり出すこと」にあり、通常の医療行為とは意味合いが全く異なります。正に、つくり出す命にリコールはありません

不妊治療の本質は染色体の移植医療ですから、精子と卵子を組み合わせて『命をつくり出す』不妊治療は、生産物責任法、PL(product-liability)法の範疇に含まれます。また医療機関は治療の安全に最大限の努力を払う善管注意義務を負っていますが、不妊治療における善管注意義務とは、『生まれてきた子どもが一生元気に過ごせるよう努力すること』にあり、ここに『本来の不妊治療のゴール』があります。どんなに革新的な不妊治療が行われようと、「安全」が何よりも優先されなければなりませんので、『不妊治療のゴールは受精すること、妊娠することではない』のです。不妊治療は医療の中でも特殊であり、生まれてくる子どもから治療への承諾を得られないまま開始される医療であることをしっかりと認識しなくてはいけません。

最後に、多様に精子機能の異常が認められる精子異常の背景には遺伝子異常が関与している可能性が高いため(精子異常は治せるの?の項目参照)、その根本的な治療法は おそらく登場してこないと思われます。その点を踏まえ『治療を止める勇気』が必要な場合もあるのです。不妊治療を希望する全ての夫婦が不妊治療の適応基準を満たして治療の土俵に乗れる訳ではありません。また治療の土俵に乗れても皆が『本来の不妊治療のゴール』に辿り着ける訳でもないのです。

「どのように不妊治療の技術を選択すれば安心して治療に臨めるのか」ということをしっかりと理解して、納得した上で不妊治療に関わっていくことが極めて重要です。そうすれば最終的に子どもを授かっても授からなくても、その後の幸せな人生に繋げることができるかと思います。

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