精子学第一人者が教える精子異常の真実

2019.02.27
精子学第一人者が教える精子異常の真実

精子学第一人者が教える精子異常の真実

近年では「卵子の質の低下」、わかりやすく言えば「卵子の老化」が注目され、なかなか妊娠できなくて「不妊」となりますと、その原因は「女性側の問題」であるという概念が未だに定着しています。一般的に年齢を重ねていくことにより卵子の質が低下することを「卵子の老化」と言っていますが、学術的には年齢と共に卵巣組織単位重量あたりの原始卵胞(将来成熟した卵子に成長する可能性を備えた未成熟な卵子を一つ入れている袋)の数が急速に減ることを言います。

日本生殖医学会においては、卵子の老化のメカニズムは明らかではなく、その予防方法もない現状にあると開示しています。一般的に35歳以上になると卵子の老化が急激に進みだすと語られていますが、個人差もありますので一つの平均値にすぎないという程度の目安に留めてほしいです。重要なのは35歳以上という平均値ではなく、「自身の卵子の質が年齢に比して良いのか悪いのか?」ということ、つまり、個人における卵子品質の位置づけを見極めることが重要なのです。

一方、最近では卵子ばかりではなく、不妊原因の半分が男性側の精子にあることから、「精子の質の低下」も着目されるようになました。一般的に卵子の老化と同様に、加齢と共に精子の老化が進むとか、精子の質が下がるとか、そういったイメージで語られ、日本生殖医学会においても精子は加齢に伴い老化する傾向があるという報告もありますが、一方で加齢の影響は低いとする報告もあり、統一された見解がありません。実際のところですが、精子の質的な問題の背景には、遺伝子の異常が関与している場合が多いというのが事実ですので、加齢によるという単純な話ではないのです。わかりやすく解説しますと、精子を造る元の細胞(始原生殖細胞)における遺伝情報を担うDNAに『新生点突然変異(デノボピンポイントミューテーション:遺伝物質DNAなどの一つの塩基が別の塩基に突然置き換わってしまうこと)』という、見つけ難いDNAレベルの異常が出ることが『精子の老化』に大きく影響するというのが真実なのです。

一般的に男性不妊の約90%を占める精子形成障害(精子異常)において、精子の産生量(精子数)の減少や運動率の低下ばかりが指摘されますが、臨床上で最も重要なことは、見かけだけでは見極められない隠れた精子機能の異常が多様に潜んでいる場合が多いこと、またその背景には遺伝子の問題が関与している場合が多く治療が困難となり、精子の問題は深刻化する点にあります。

多くの精子機能の異常は、顕微鏡で簡単に認識できる精子数や運動率を見る世間一般で行われている精子検査では見極めることできませんが、高精度な分子生物学的な解析技術を確立し得たことにより精子機能を精密に調べられるようになりました。この新しい開発技術によって、精子機能が正常か異常かを見極めて精子の質の良し悪しを正確に把握する(精子の品質を管理する)ことが可能になり、現在では精子側の妊孕性をある程度予測できるまでになりました。

なかなか妊娠できない、不妊治療を続けていても全く成果が出ない場合には、検出できていない精子機能異常が原因かもしれませんので、精子機能の精密検査を試みてください。新しい治療展開に繋がることもあります。詳しくは精子機能の精密検査の項目を参照ください。不妊治療がうまくいかないのは女性側の問題という時代ではないのです。

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